念願の初キャップを獲得したWTB山田だが、初トライは奪えず
(撮影:出村謙知)
(撮影:出村謙知)
チームをエナジーアップさせること。
後半23分に田中史朗に代わって途中出場したSH日和佐篤が心がけたことだ。それだけ、前半のジャパンに覇気がなかったことの表れでもあるだろう。
立ち上がりから圧倒的にジャパンが攻めたにもかかわらず、ハーフタイムのスコアは13-13。
「前半だけで7つのハンドリングエラーがあった」(スコット・ワイズマンテル ヘッドコーチ代行)
前半14分にモールからFLヘンドリック・ツイが飛び込んだ以外は、攻めても攻めてもミスでチャンスを逸失し続けた。
リバプールから西に50キロ。
北ウェールズの港町コルウィンベイのパーク・エイリアスに集まった1250人の地元ファンの中で、前半のジャパンを見て「雑なチーム」と思わなかった人はいなかっただろう。
「コンタクトで全然勝てるので、個人技でいってしまった」(FB五郎丸歩)
IRB世界ランキング19位のロシアは、今回の欧州遠征で対戦してきた世界ランキング9位のスコットランド、イングランドプレミアシップの強豪グロスター、そして英国に到着する前に26年ぶりに日本で戦ったニュージーランドから見れば、ワンランクもツーランクも落ちるチームであることは間違いなかった。
「みんながみんなボールキャリーにいこうとしてしまっていた。軽いプレーの連続」(SH田中)
前半10分にロシアに奪われたトライも、せっかくフェイズを重ねて攻めたのに、安易にグラバーキックを選択したことろを逆にロシアにボールを足にひっかけられて、一気のカウンターで失ったもの。
恐らく、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチが帯同していたなら、試合中にジャパンの軽いプレーを糾弾する叫び声を上げまくっていただろう。
ハーフタイムにコーチ陣からある種、適切とも言える厳しい言葉があったことで、後半「ようやくみんなで我慢して、いいアタックができるようになった」(WTB廣瀬俊朗主将)。ジャパンは、前半のミスを挽回するかのようにCTBマレ・サウが2トライ(10分、17分)を挙げたのをはじめ、計4トライを加えて、最終的には40-13にまで点差を開いてツアー初勝利。
ひと足先に帰国したWTB福岡堅樹に代わって先発起用された藤田慶和、その藤田からバトンを受けるかたちで後半28分から途中出場して念願の初キャップを獲得した山田章仁という期待のスピードスターたちも、時折いい走りを見せたものの、まわりとリンクし切れずに、共にトライは記録できず。
後半の修正ぶりは評価できるものの、全体としてはフラストレーションを感じさせる「勝って反省できる」(五郎丸)一戦となった。
(文・出村謙知)